第八話 認知症と介護殺人
皆さま、ここで今一度認知症を抱えるご家族の心情を考えてみたいです。
第一話でも申しましたが、認知症には優秀な元看護師さんでも元大学教授でもなり得るわけです。
その方が、一家の大黒柱でる夫であっても、一家の団欒の中心である母親であっても、少しづつその方の能力、そしてその方が持たれていた良い人間性、個性、尊さ、尊厳が失われ変質し、あたかも人間崩壊を目の当たりにすることになります。
前もって、この病の深刻さ、恐ろしさを知っておけば、これはこの方ではない! 病がさせているのだ! と認識を切り替えることができ、介護される方の精神的負担は少しは軽減されるかもしれません。
しかし、あの頼もしい父親が! あの優しい母親が! なんで~! となり、その絶望は計り知れません。
第四話で申しましたが、認知症には主に4っのタイプがありますが、それぞれが重症化すると、総合失調症の分裂症のごとき症状になります。
ただし、認知症は脳神経、脳細の病、肉体の問題です。
総合失調症は心の病、精神の問題であり、この両者は明確に別物です。
身内の家族だけが耐えればよいだけなく、他人さまにも多大な迷惑をおかけすることも当然あり、それを防ぐためには24時間体制でマンツーマンで対応するしか手はありませんが、そのような十分な対応を取れるご家族は少ないでしょう。
後は、施設にお願いするしか方法はありませんが、それとてお金の問題もありますから対応には限度があります。
介護殺人について、厚生省には統計がありません。当然、認知症を原因とするものもありません。
ただ、日本国内では総数として殺人事件は、昭和30年初め頃の3千数百件レベルから1千数百件へと激減しています。
その中で、介護殺人は逆に増加していく傾向にあります。
認知症者の絶望的な状況を見て、逆上して虐待的に殺人を犯す方もあれば、失意して希望を無くし殺人に走られる方もあります。(無理心中も!)
その加害者が
夫、妻、息子、娘。孫、息子嫁、娘夫であったりする訳です。
この悲劇の結末に、家庭は崩壊し、今まで営々と築かれてきた平和な家庭は、いったい何だったのだろかと想わずにはおれませんね。
これは他人事ではなく、将来の私の問題でもある訳です。
悲劇です!